2011年10月26日水曜日

ご無沙汰

長いことご無沙汰しておりました。
前期が終わっての反省や理研でのインターンシップなど
書きたいことはあるのですが
勉強したいことが多すぎて、なかなかブログには手をつけられずにいました。
今期も
(1)位相空間(学部生向け講義)
(2)微積の基本(学部生向け講義:関数の連続性などの細かい議論)
(3)結び目理論
(4)シミュレーション、数値解析
(5)不等式(セミナー)
(6)数理モデル(オムニバス)
(7)アクチュアリ数理(主に損保) 

と盛りだくさんです。
さらに自分の勉強もしたいし就活も始まります。
あまりハードルは高くせず、短くともとにかく投稿するようにしたいと思います。

2011年7月15日金曜日

将棋の子



久々の読書です。
修士課程在学中は、読書は控えめにしておこうと思っているのですが
一つの夢を追うリスクを読んで
無性に読みたくなり、その日にアマゾンでポチって
届いた日に一気読みしてしまいました。

主人公は成田英二さん。
奨励会に入りますが、親が亡くなったこともきっかけになり
自らの才能に見切りをつけ別の人生を歩み始めます。
それが巡り巡ってサラ金の借金が返せなくなり
40歳になる頃には1日働いた給料が800円というような仕事をしていました。
著者の大崎さんはそんな成田さんに会い、それまでの成田さんの人生を聞きます。

それでも成田さんは誇りを持って生きていました。
それは自分は将棋が強かったということでした。
その誇りは生きるエネルギーになっていたようです。

プロの棋士になるには奨励会に入り
所定の年齢までに段位を取得できなければ退会しなければなりません。
奨励会に入るような方は、大体将棋しかしていないような方だそうで
それまでの努力が報われず退会することになると
本人にとっては悲劇です。
将棋が全てを奪った、という見方になってしまう人もいるようです。

しかし大崎さんは、将棋は優しい、将棋は人に与えるものがあると言います。
成田さんの持つ感情、成田さんと大崎さんの友情もそうです。

成田さんの厳しい人生をとても羨ましいとは言えませんが
彼の人生の中で出会う人の温かさは羨ましいものです。
また彼には自覚は無いでしょうが、逆境の中で生きる姿は感動的だとも思います。



私自身に置き換えて考えてみると
数学の勉強を直接役に立たせるということは難しいことですが
一生懸命勉強すれば、大崎さんが将棋に対して感じているように
私も数学を優しいと感じるようになるのかもしれません。


2011年5月3日火曜日

講義(4)数学史

講義紹介シリーズ第4回。
数学史。

個人的な目的としては、今後知識を得ていく中で
数学史と結びつけることでより馴染みのあるものにしていこうと思っています。
講義本来の目的としては「数学とは何か」という問に対する答えを各自が考えること。
哲学的な問です。

ただ事実を羅列すれば歴史になるわけではない、というのが先生の持論。
なぜ、ある時、ある数学の分野が発達したのか。
それは、当時の数学者がある分野に関する問題に取り組んでいたからなのだが
では、なぜ、当時の数学者がその分野の問題に取り組んでいたのか。
それを考えることが重要なのだと。


ちなみに「数学とは何か」という問について
ポアンカレは「数学とは異なるものに同じ名前を与えるアートである」
とか言っていたと記憶しています。(ソースが見つかりませんでした。)
確かに数学の特徴は一般化することで扱える対象を広げることにあることは知っていますが
ポアンカレほどの人になると、どれくらいの実感を持ってそう言ったのでしょう。

2011年5月2日月曜日

講義(3)Advanced Topics in Cryptography

講義紹介シリーズ第3回。
Advanced Topics in Cryptographyなる講義。
暗号(Cryptography)についての話。
Advancedと謳ってはいるが英語で講義を聞くというのが一番の目的で
初歩的な話をされる、ということになっている。

使っている教科書はこちら。

A Computational Introduction to Number Theory and Algebra

外国の専門書はこんなふうにフリーでダウンロードできるものがあるんですね。
iPadに入れて使っています。
また一つiPadの有用性が上がりました。

話が逸れました。
この講義、最終的にはRandomness extractorなるものに行き着くようです。
Randomness extractorとは、semi-randomなインプットから
完全にランダムなアウトプットを得る関数のこと。
暗号の分野においては、鍵を得るために重要な役割を果たすようです。

暗号の鍵というのは暗号を復号(decrypt)するためのとっかかりのようなものです。
たとえば。
小学生の時、かわいらしいたぬきのイラストが入った手紙がまわってきましたよね。(いやないか)
その文が次のようなものだったとします。
「すたずきはさとうたがたすき」
この文から「た」を抜いて読むと
「すずきはさとうがすき」
鈴木さんという女の子が、どうも佐藤くんという男の子の事が好きらしい、という
子供らしい、微笑ましい(?)内容です。
この場合は「た」を抜く、たぬきが鍵だったわけです。

もう少しまともな例を。
シーザー暗号というものがあります。
これはどのようなものかというと
ルールに従ってあるアルファベットを別のアルファベットに置き換えます。
たとえば、aというアルファベットを意味する文字はb、bを意味する文字はc
と、ある文字を意味するとき、1つ次の文字に置き換えることにします。
<a,b,・・・,z>→<b,c,・・・,a>
なので「code」という平文は「dpef」という暗号文になります。
このとき、このシーザー暗号の鍵は「1」です。
ある暗号文がシーザー暗号によって暗号化されているとわかっている場合
何文字次の文字に置き換わっているかということがわかれば復号することができます。
この数がシーザー暗号の「鍵」です。

ある暗号文について
(1)何の暗号を使っているのか
(2)鍵は何か
ということがわかれば復号できます。
使える暗号は限られていますので、鍵をわかりにくくすることが非常に重要なのです。
そこで先述のRandomness extractorを使いましょう、ということになったのですね。



ところで、ランダムって何でしょう?
よく無作為の意味で使われています。
たとえば私には1/10000秒を知覚する能力はありませんので
ストップウォッチのスタートボタンを押して、少し経ってからストップボタンを押したとき
表示された時間の1/10000秒の桁の数字はランダムに得られたと言えます。
得られた数字を記録し、同じことを繰り返せば数のリスト(乱数表)が得られます。
私はこのリストの数がランダムに得られたものだということを知っていますが
この数の生成過程を知らない別の人が見た時
どうやってそれが乱数表だとわかるのでしょうか?
つまり、ランダムの判定法は存在するのでしょうか?
ランダム判定法を作ろうと思ったら
ランダムの定義は、無作為だけでは不十分です。

岩波数学入門辞典には
「一般には、独立で同じ分布に従う確率変数の実現値とみなせる数列」
となっており、生成課程を知らなければランダムか否か判断できないことになっています。

擬似乱数の生成アルゴリズム、なんてものもあるらしいので
ランダムについて、何かわかっていることがあるのだろうと思います。
その辺もおいおい勉強していきたいなぁ、とは思いますが、いつになることやら。
私は基礎がなっていないので、まずは基礎を勉強します。

2011年5月1日日曜日

講義(2)数学入門

講義紹介シリーズ第2回。
数学入門。

この講義は学部時代に数学を専攻していなかった学生向けに
基礎を叩き込むためのものです。

使っている教科書はこちら。




講義では、学生が章末の演習問題を皆の前で発表します。
その時、先生がその学生に知識の穴があると判断したら
次回までに調べて来て短いセミナーを行うように命じるという進め方。
内容は線形代数、微分積分にとどまらず
ベクトル解析、複素関数と幅広く取り扱われる模様。
半年でこれ一冊やるとなると
それぞれに対するかけられる時間は短くなります。
線形代数と微分積分をみっちりやろうと思ったら
自分でやるしかないようです。

2011年4月29日金曜日

講義(1)セミナー(リー群入門)

学生生活開始から早3週間。
もうゴールデンウィーク。

入学前の勉強不足がたたってヒーヒー言いながらやっています。

まずは、出席している講義を紹介するシリーズなど始めてみることにします。
紹介する予定の講義は以下の4つ。
これ以外にも出席している講義はあるのですが
オムニバス形式で紹介しにくいので割愛します。
(1)セミナー(リー群入門)
(2)数学入門
(3)Advanced Topics in Cryptography
(4)数学史

で、今回は第1回。

セミナー。

私が在籍するコースでは修士論文を課さないのですが
半年間のセミナーを2年間で計4回行い
毎回そのレポートを提出することになっています。
いわば、メインの単位です。
このセミナーでは、教科書を読み
毎回その内容について発表するということを
同じコースのメンバー3人が毎週交代で行います。

そこで使っているのがこちら。



リー群とは何ぞや?ということですが
イマイチ見えていません(;´Д`)
そんな状態なので何も言いようが無いのですが
ざっくりとした説明としては
幾何的な対象を、代数(行列)を使って表現するというような分野で
場の量子論において重要なツールとなるようです。

線形代数や微分積分があやしい私が
全体像の見えていない分野のセミナーなどできるのか疑問でしたが
一応、今のところ、できています。
もちろん、すんなりとはいきません。
一行を理解するために
線形代数や微分積分の教科書に戻ったり
時には全然馴染みのない代数や多様体の教科書にあたったりしています。
それでもやはり数学が好きですし
本を読むのも好きなので楽しいです。
本を読むというのは言っていることを理解するということですが
一般書にしろ、数学書にしろ
構成が見えると立ち所に理解が深まります。
そして、それをどうしたらわかりやすい形にできるか
再構成するのが楽しいのですね。

今はまだどんなものか見えていませんが
今よりはっきりした景色が見えるようになりたいです。

2011年4月28日木曜日

数学ガール 乱択アルゴリズム


数学ガール第四弾。

一般向けとは言え、やはり数学の本なので
知らないことに関しては流し読みではすませられません。
発売が待ち遠しかったため、買ってすぐに読んだ時は先を急いでしまい
途中でついていけなくなってしまいました。
ということで、二度目は丁寧にフォロー。
説明が丁寧なので、少し時間と根気をかければついていけました。
数学の大学院生がそんなんじゃまずいだろ、というツッコミがあるかとは思いますので一つ弁明を。
私は学部時代化学を専攻しており数学とはほぼ無縁でした。
現在、在籍しているコースはそういう学生向けのコースになっています。
ですので、どうか日本の数学教育について案じられませぬよう。

この本についてざっくり説明すると、主にアルゴリズムの解析の話、と言えます。
その中でも最大の目玉は、3-SAT問題。
この問題は、答えの候補となるものが膨大な数にのぼります。
一つ一つの候補にあたり、それが答えとなるかどうか調べるのは非効率的なので、効率よく答えを見つけるアルゴリズムを考えます。
そして、考えたアルゴリズムがどの程度効率的か評価することを
アルゴリズムの解析と言っています。
この解析に使う知識は、ほぼ高校で習うことのみ。
高校の確率の授業でコイン投げだの道順の組み合わせだの
おもしろくないと思っていたことが
ここでつながるのか、と興奮しました。

もう一つ、おもしろかったのは4章の確からしさの不確かさ。
公理的確率と古典的確率で「同じ確からしさ」の意味するところが異なるということなのですが
こういう根本的な問に答えてくれるのが数学ガール。



この数学ガールのこともあり、個人的にアルゴリズム、
正確にはコンピュータサイエンス熱が上がっています。
昨年、名工大の市民向け講座でもアルゴリズムの話を聞いたのですが
そこでは、グラフ理論とアルゴリズムを使って一筆書きの経路を探したり
さらにそれをバイオインフォマティクスに応用するという話がありました。
そういった応用範囲の可能性の大きさが魅力の一つです。
さらに組合せ論、グラフ理論といった数学をツールとして使えるというのも魅力です。
計算幾何学(∈計算機科学)なんて分野もあるようですし
P問題≠NP問題予想なんていう、大難問につながる分野でもあり
広い世界が広がっていそうな感じがします。

まだ、数学の基礎を固める段階ですが
少し意識して勉強してみたいなぁ、と思い始めています。